精油の分析方法

今のところ、香りの検出は人の鼻が最も優れていると言われています。しかし、精油の中には、たくさんの成分が含まれているため、人は香りを総合的にしか感じることができません。
そこで、香りの成分を分離して分析することができるガスクロマトグラフィー(GC)が活躍しています。

 

ガスクロマトグラフィー(GC)


クロマトグラフィーとは、分離する分析法の総称です。ガスを使うのでガスクロマトグラフィー(略してガスクロ)と言います。
ガスクロは、固定相と移動相(ガス)と呼ばれる2つの相が平衡状態にあり、そこを精油が通過します。精油はガスに乗って流れていきますが、精油中の各成分が固定相と移動相とそれぞれ相互作用を起こし、成分ごとに相互作用の差が起こることにより、成分ごとに移動の速度がかわり、その結果成分を分離することができます。固定相や移動相の種類を変えることにより、出てくる成分の順番が変わります。
分離した成分は、ガスの熱伝導率を比較するTCD、水素炎で燃焼することによるプラズマ電子を検知するFID、FTIRなどの検出器で分析されます。同じ成分は同じ条件で分析すればいつも同じ時間にピーク(分析の山)が出るのですが、そのピークがどの成分なのかを知るためにはあらかじめ成分の検出される時間(リテンションタイム)を把握しておく必要があります。逆にリテンションタイムを把握しておけば、成分を同定することができます。しかし、ピークが重なってしまったり、同じ時間に出てくる成分などもあり、分析は簡単ではありません。分析の条件を変えたり、複数の分析方法を組み合わせたりして分析を行います。
不揮発性成分の場合は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用います。精油の場合はあまり用いられませんが、一部の成分を分析する場合はHPLCが用いられます。HPLCの場合も様々な検出器を組み合わせることができます。
 
 

ガスクロマトグラフィーマススペクトル(GC/MS)


精油を分析する最も一般的な分析方法です。分離までは上記のガスクロマトグラフィーと同じなのですが、最後に検出する部分が質量分析計(マススペクトル)という機械になります。 質量分析計で分析することにより、成分を高確率で同定することができます。リテンションタイムと合わせることにより、ほぼ100%成分を同定することができます。また、ピークが重なってしまったとしても、ある程度はマススペクトルを分解することにより、成分を推定することができます。ただし、質量を計測するため、同じ質量の光学異性体などは判別できない場合もあります。
 
 

ガスクロマトグラフィーオルファクトメトリ(GC-O)


別名、匂い嗅ぎガスクロ、スニッフィング等と呼ばれます。ガスクロで成分を分析するまでは同じですが、検出器は人の鼻です。ガスクロのカラムから出てくるガスの匂いを嗅いで、リテンションタイムと匂いの質や強さを記録します。機械の検出器で検出できない成分を探すことができます。例えば、ダマスクローズに含まれるはちみつのような香りのダマセノン。通常のガスクロでは成分を見つけることができませんが、GC-Oを用いることにより成分を見つけることができます。こういった微量成分が精油の香りを作るキー成分であることも多く、非常に重要な分析方法です。しかし、このGC-Oは何十分もにおいをかぎ続けなければいけないため、過酷な作業であり熟練の技が必要です。
また、AEDA法(Aroma Extract Dilution Analysis)と呼ばれるGC-Oを進化させた方法が用いられています。この方法を用いると、各成分の成分の香りへの寄与度を推定することができます。例えば、グレープフルーツであれば、主成分であるリモネンよりも、p-Mentha-8-thiol-3-oneという成分のほうが圧倒的にグレープフルーツを特徴づける成分として知られています。その含有量はリモネンよりもはるかに少ない量ですが、その香りの強さはリモネンの何万倍以上も差があります。
 
 

※確かな情報を元に作成していますが、間違い等を見つけましたらご連絡いただけると助かります。

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