精油の劣化と保管方法


結論から言います。精油は冷蔵庫保管をオススメします。

なぜ高級フルーツは冷蔵で販売しているのでしょうか?
何年もの使用期限をつけられ、店頭に置かれ、室温や光にさらされている精油を見ると残念に感じます。
精油は正しく保管しないと、香りが劣化していきます。
精油は貴重な自然からの恵みです。ちょっとした工夫で最後の1滴まで新鮮な香りを楽しんでみてはいかがでしょうか。
※精油によっては熟成し、時間が経つと良い香りになるものもありますが、過度な温度や光には注意しましょう。

 

精油の劣化について

 

酸素

完全に外部と遮断された環境に置かれた精油であれば、ある程度熟成が進めば、化学的に平衡を保ち劣化は進まないと考えられます。しかし、酸素が存在すると、酸化が起こり香りが劣化していきます。1度キャップを開けたら、酸化が始まります。また、未開封の状態であっても、キャップが工業製品である以上、完全に密閉した状態を維持することは難しいです。また、キャップが空気をゆっくりと通してしまう性質をもっているため、残念ながら完全に酸素をシャットアウトすることはほぼできないと考えられます。
 

精油は熱によって酸化などの反応が促進されます。温度が10℃上がると、約3倍の速度で劣化すると考えられます。(アレニウスの式という、医薬品の分解を予測する公式より)
保管温度と反応速度との関係を下記の表に示しました。
保管期間は、5℃で使用期限を365日とした時に、どのぐらい短くなるかを示しました。
 
保管温度 劣化速度 保管期間
5℃ 1倍 365日
15℃ 約3倍 約121日
25℃ 約9倍 約40日
35℃ 約27倍 約13日

5℃の冷蔵庫に保管した場合の劣化速度を1倍とすると、25℃の室温保管では9倍の速度で劣化することになります。
保管期間に置き換えてみると、5℃で1年良い香りを保てたものが、25℃では40日しか良い香りを保てない、ということになります。
樹木系などは劣化の速度が遅いので25℃で1年保管してもあまり変化は感じないと思いますが、柑橘系などの劣化しやすい精油は室温に置いておくと1ヶ月程度で香りが変わったと感じることもあり、注意が必要です。
 

精油は光によっても酸化反応などが促進されます。熱とは起こっている反応が変わることが多く、少し違う香りになることが多いです。
精油は遮光瓶に入っています。遮光瓶はある程度の光を遮ってくれますが、完全に光を遮断することはできません。

光の通し方は、瓶の色によって異なっています。

光を通しにくい←  茶>黒>緑>青>透明  →光を通しやすい

茶色の瓶だと、紫外線を95%以上は遮ってくれます。
※当店も青色の瓶から茶色の瓶へ、光による劣化を考慮して変更した経緯があります。

店頭では商品を美しく見せるために、強いライトを用いていることが多く、そのため光による劣化が進んでしまいます。光による劣化速度は、温度が加わると、相乗的に早くなります。光が当たった場合は、光の強さにもよりますが、熱で示した表にさらに数倍の速度で反応が促進してしまうと考えられます。店頭で精油を選ばなくてはいけない場合は、最低でも箱に入ったものを選ぶと良いと思います。
 

金属

精油は金属がもっている触媒作用によっても反応が促進されます。一般的に大量の精油の保管にはアルミ缶が使われることが多いです。これは、光や酸素を通さないから反応が極端に遅いからです。しかし、金属には触媒作用があるため非常にゆっくりではありますが、劣化が進みます。冷蔵で2年程度までの保管であればアルミ缶で問題ないですが、常温で保管する場合は、アルミ缶はお勧めできない容器です。
 

水分

精油は水分によっても反応が促進されます。しかし、もともと精油は水分と一緒に存在していたため、水分による影響は少量であれば大きくはないです。冷蔵庫に入れると、結露して水が入ることを気にされる方もいらっしゃいますが、それ以上に熱や光のほうがはるかに劣化が促進されるため、水分の優先順位は下げて良いでしょう。ただし、明らかに結露した結果、水滴が見えるようになることもあります。外観を気にする場合は、冷蔵庫から取り出した後、室温に戻るのを待ってからキャップを開けましょう。

 

精油の保管方法

 
精油の劣化の原因を示しましたが、下記の優先順位で保管を考えると良いと思います。

影響大←   熱、光 >酸素、金属、水  →影響小

保管方法としては、「茶色の瓶に入れ、キャップをしっかりしめ、専用のボックスなどに入れて、倒れないようにして冷蔵庫に保管する」が良いと思います。

酸素を防ぐことは上述の通りほぼ不可能であるため、キャップをしっかりと閉めることで対応しましょう。
食品などとの相互の香り移りを避けるために、専用のボックス(理想は金属の空気を通さない密閉した箱ですが、例えば空気を通しにくいジップロックのプラケースのようなもの)に入れると良いと思います。特に、使った精油が口のところについてにおいが漏れることもあり、香りがお肉や野菜などについてしまわないように注意しましょう。
また、”倒れないように”というのもポイントです。キャップに精油が付着した状態が続くと、精油がキャップを溶かしてしまう場合もあります。立てて保管するように心がけましょう。
冷蔵庫に入れるデメリットとしては、ローズオットーなどが固まってしまい、毎回溶かさなければいけないこと、粘性のある精油が出にくくなることがあり、多少不便もありますが、香りの劣化と比較するのであれば、微々たる問題なのではないでしょうか。(ローズオットーを使う時は極力熱をかけずに、室温に置いておくか、軽く手のひらで温めると溶解します。必ず均一に溶かしてからご使用下さい)


※パフューマーハウスでは精油のことを総合的に考えた結果、精油の保管を専用の容器に入れて、
 温度管理された冷蔵庫で行い、最高のコンディションの状態でお届けできるように管理しています。
 また、小瓶に入れてからの香りの劣化が早いため、ご注文をいただいてから丁寧に充填しています。
 お届けまでお時間がかかることもありますが、ご理解くださいますようお願い申し上げます。

 

※確かな情報を元に作成していますが、間違い等を見つけましたらご連絡いただけると助かります。

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